佐藤東洋士さん、桜美林と共に歩み、旭日重光章受章/人材を育て私学振興に尽力


「学生の意欲をサポートしたい」と佐藤さん

「学生の意欲をサポートしたい」と佐藤さん



今春の叙勲で、国と公共に顕著な功績があった人に贈られる「旭日重光章」を受章した桜美林学園理事長・大学総長の佐藤東洋士さん(72)。学園の発展に尽くすとともに、大学教育の振興に向けた国の審議会委員などを務めて来た功績が高く評価された。今も学園創立100周年に向けて策定した中期計画を推進しつつ、新キャンパス開設など積極的な大学経営を展開している。桜美林大1期生でもある理事長に受章の感想と、学園のこれからを語ってもらった。(編集委員・戸塚忠良/2017年6月10日号掲載)

■恩師の業績

桜美林学園の創立者、清水安三氏(故人)はキリスト教の宣教師として中国へ渡り1921年、北京で貧しい人々に識字教育を行う「崇貞学園」を創設。多くの人々が学ぶ場となり、民間教育に貢献したが、終戦によって閉園を余儀なくされた。

しかし帰国後も教育への情熱は衰えず、46年に桜美林学園を創立し中学、高校、短大を相次ぎ開校。66年に大学を開設した。理念として掲げた「学而事人」(人に奉仕するために学ぶ)の精神は、不変の学是となっている。

佐藤さんは「清水先生は常に弱い立場の人たちに寄り添い、何事にも前向きでした」と師の人柄をしのぶ。

■母校に奉職

佐藤さんは1944年、北京で生まれた。両親が崇貞学園で教鞭をとっていたため清水安三氏との縁が深く、慶大経済学部で学んでいた時、「四年制の大学を創るから入らないか」と声をかけられ、文学部一期生として桜美林に入学した。

大学院在籍中に助手となり修了後は講師、教授と教育者の道を歩み、学園の企画室長なども務めた。その後、大学総長、学園理事長に就き、2012年からは学園長に就いている。この間、学園の運営と発展に力を尽くし、現在に至るまで、グローバル時代に求められる人材の育成を推進している。

公職も相次ぎ、文部科学省学校法人運営調査委員会委員、中央教育審議会臨時委員、日本私立大学協会副会長などを歴任。今も世界大学総長協会会長の要職にある。

■受章の喜び

こうした功績が高く評価されて旭日重光章受章に至った。その率直な感想を温かな人柄がにじむ口調でこう語る。

「よく学び社会と人々のために尽くすという建学の志を受け継ぎたいと考え、学園での教育に携わってきました。振り返ると47年になります。こんなに長く勤めるつもりはありませんでしたが、まあ、居心地がよかったのですね(笑い)。

年を追うごとに学園の規模が拡大し、社会で果たす役割も増えています。私自身も自分に求められる役割を一生懸命に努めてきたことが評価されたのではないかと思いますが、どんなことも個人の力でできるものではなく、多くの人たちの協力と支えのたまものです。受章はその人たちと一緒に受けた栄誉だという思いが強く、喜びと同時に感謝の気持ちを深くしています」

■学園の今と未来

大学は現在、5学群で構成し、アフリカ、中東を含む世界各国の大学との国際交流を活発に行っている。今年度の留学生は在籍者の約23%にあたる650人を数える。

「最近はITなどの先進的な技術を学びたいという意欲を持つ留学生が増えています。こういう人たちの希望に応えるため、職業分野の科目も充実させています。それも世界がいま日本に期待している役割を実践することではないかと考えています」と話す。

近時、大学の鼓動を伝える話題にも事欠かない。開設50周年にあたる昨年、野球部が首都大学野球連盟1部リーグ初優勝、明治神宮野球大会初出場準優勝という輝かしい成績を挙げて錦上に花を添えたのは記憶に新しい。

ホットニュースは、新キャンパス開設に向けた二つの取り組みだ。

一つは新宿百人町キャンパスの工事着工。7900平方㍍の国有地を取得して5階建ての施設を建築する。19年4月にオープンし、ビジネスマネジメント学群と、大学院の一部を移設する予定だ。

もう一つは、町田市山崎団地地区への芸術文化学群キャンパスの開設。市立小中学校の跡地を賃借して新施設用地とする。高齢化と空き家が進む団地を学生のための宿舎として利用する構想もあり、社会的な課題克服に一石を投じる試みにもなりそうだ。

学園の地域貢献活動は活発で、佐藤さんは「今後はリタイア後の人たちの生涯学習の場にもしていきたい」と、理事長としての新たな地域貢献への腹案を明かす。

趣味ではクラシックカーの再現製作などを愛好する一面を持つ佐藤さん。相模原市民ギャラリーで開催中のノスタルジックデザイン展示会にも足を運んだ。「何事も諦めずに続けることが大事」というモットーの通り、胸の中に桜美林学園への愛着と人間の多様な活動への生き生きとした関心が燃え続けている。

 

 

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