住村哲央さん、「福よし」拠点にFC展開/名物「とろけるハンバーグ」


オーナーシェフの住村さん

オーナーシェフの住村さん

 黒毛和牛と国産牛、それにたまねぎだけを素材に使い、卵・小麦粉などのつなぎを一切使用しない「とろけるハンバーグ」が人気のレストラン、福よし(本店・中央区千代田)。2016年度の相模原お店大賞をはじめとする数々の受賞歴と、マスコミでの紹介などが品質の高さの証明になって、昨年末にはJR古淵駅前に2店舗目を出店し、現在はフランチャイズ展開に力を入れている。店のオーナーであり看板メニューの開発者でもある住村哲央さん(43)には長いキャリアとともに、腕達者なアマチュア彫刻家という意外な顔もある。(編集委員・戸塚忠良/2017年1月20日号掲載)

■料理人の道へ

 住村さんは相模原市緑区大島の農家・畜産家の生まれ。すぐ近くにある母方の実家は『豚屋の大貫』の名で市内に知られた畜産農家だった。

 小学生の時、テレビドラマで田村正和が演じるシェフの格好良さに魅せられたことが、将来の進路の伏線になった。

 光明学園相模原高校を卒業後、新宿調理師学校で学んだ。フランス料理はトップクラスの成績だったが、中華料理の成績はそれほどではなかった。ところが、卒業後に選んだ就職先は横浜中華街の有名店、萬珍樓だった。

 住村さんは「フランス料理や和食はチームで作るが中華は一人。その手順を体で覚えたかった。火を大胆に使う技術をマスターして新しい料理を作りたいと思った」と話す。

 中華街での4年間に料理の腕を磨いたのは言うまでもないか、別の面でも腕をふるうことになった。それは彫刻である。

 叔父の大貫博さんは現代美術家協会代表を務める画家。住村さんは物心つく前から叔父の描画や彫刻の技法に親しみ、自然に自分の身につけていた。

 萬珍樓でニンジンなどに彫り物をしているうちに社長の目にとまり、大事な客を迎える折に彫刻作品を作ってくれと頼まれ、龍や鳳凰を制作した。こうした作品が評判を呼び、中華街の他店からも彫刻の依頼が来るようになった。料理修行のはずが、彫刻ばかりを任されることに危機感を覚え、同店を退職した。

■修業時代

 中華街の次の職場は、東京・青山のレストランバー。副料理長という肩書だったが、自分で考えた創作料理を出す役割だった。また、同じグループの和食やイタリアンの店でも働き、夕方5時から翌朝5時まで働き、横浜の住まいには始発から間もない電車で帰る日々が続いた。

 「つらいとも苦しいとも思わなかった。料理を考え、作ることから後片付けまで何でもやった。お酒の勉強もしたし、バーテンの仕事にも挑戦した。この期間は自分にとって非常に勉強になった」と回顧する。

 こうした生活を2年ほど続けた後、知人の紹介でふるさと相模原のバーに勤めることになった。間もなくもう一軒も任されるようになり、本格的なレストランバーが少ないこともあって都会的な雰囲気と料理が若い世代に歓迎され、大いににぎわった。

■ハンバーグ開発

 そんな経緯もあって、長い間持ち続けていた「自分の店を持ちたい」という目標を実現したのは27歳のときだった。中央区の西門にピザ、パスタなどの店を開業し、次第に肉料理をメーンにするようになった。昭和橋近くに2号店を開設し、3番目の店舗としてステーキとハンバーグの「福よし」を展開した。

 転機となったのはBSE問題だった。「BSE問題が発生して食業界がピンチに立たされたとき、知人にすすめられた宮崎牛のおいしさにびっくりした。また、あるお客様から『うちの子どもはアレルギーがあって、小麦粉や卵をつなぎに使うハンバーグを食べられない』という話を聞き、安全でおいしい素材を使って小麦粉と卵アレルギーを持つ人も安心して食べられるハンバーグを作ろうと考えた」という。

 こうして生まれたのが、黒毛和牛と国産牛、ローストオニオンだけを素材にした、とろけるハンバーグだ。

■人気爆発

 工夫をこらしたこのハンバーグは幅広い世代に大好評で、通信販売も始めた。同時に島田紳助さんが司会のテレビ番組に登場したことで大ブレイク。日本テレビの通販で3万食という破格の売り上げを記録して知名度を一気に高めた。

 これ以後、ヨーロッパモンドセレクション受賞、「TBSテレビ王様のブランチ」2016グルメアワード受賞、東京ベスト・オブ・シェフ50選出、楽天の出前・配達サイト「ラクテンデリバリー」弁当部門16年上半期ランキング1位など多数の受賞実績をあげている。

 地元でも相模原お店大賞と、地元の食の名物を来場者の投票で決めるS1グランプリを受賞。さらなる普及を図って今、フランチャイズ展開に力を入れ、東京、大阪などにFC店を獲得している。

 最近は法人向け配達弁当が好調で、昨年12月に古淵店をオープンした。「将来は緑区にも出店して一区に一店を実現したい。相模原の名物として広く認知してもらい、相模原土産ならとろけるハンバーグと言ってもらえるように努力したい」と、将来を展望する住村さんの言葉に故郷への愛着がにじむ。

…続きはご購読の上、紙面でどうぞ。