篠崎れいなさん、プロ育成と大人向けの教室を開設/バレエに託した夢を実現


好きな作品は『ジゼル』と『白鳥の湖』という篠崎さん

好きな作品は『ジゼル』と『白鳥の湖』という篠崎さん

 相模原市中央区星が丘に生まれ育ったバレリーナの篠崎れい奈さん。9歳のときにバレエを習い始め、牧阿佐美、川口ゆり子、今村博明らに師事して数多くの舞台で活躍。現在は現役として活躍する一方、生家にバレエスタジオを開設して初心者からプロ志望の上級者まで幅広い人たちを指導している。小学校の卒業文集に「将来はバレリーナになって、バレエ教室を開きたい」と記した通りの夢を実現した毎日を送る中、「次の夢は?」との問いに、「多くの人たちの夢をかなえる助けになりたい」と、清楚な雰囲気を漂わせる端正な顔をほころばせる。
(編集委員・戸塚忠良/2016年6月1日号掲載)

■感激の初舞台

 小学3年生のとき初めて母親の照美さんに連れられて市内の長谷川礼子バレエスタジオへ行ったとき、生徒の中に身振り手振りがとても優美な年上の少女がいて、一目で憧れを感じた。

 「ああいう女の子になりたい」という純真な思いは、レッスンを受けるうちにバレエに夢中になる気持ちへと変わり、その気持ちは、初めての発表会での感動体験でさらに強くなった。

 「私の出番はプログラムの一番目で、緞帳(どんちょう)の後ろで友達と列に並んでいました。幕が上がりバッとスポットライトがあたった瞬間、心が震えました。そのときの感動は言葉につくすことはできないほどでした。舞台の空気や溶けたドーランのにおいを今でも鮮明に思い出すことができます」

 心の中にバレリーナへの夢が芽生えたが、その当時から華やかな主役より、個性ある輝きを放つ脇役や立っているだけで美しい存在感のある人を目標にしていた。「同じ衣装を着ている子が何人いても、その中でどこか目立つようになりたい」というのが、思い描く未来像だった。

■青春の日々

 上溝中を卒業後、県立弥栄高校体育コースに進学した。その陰には女子サッカーの選手だった友達の影響があった。「サッカーに打ち込む姿を尊敬に似た気持ちで見ていました。同じ高校に行きたいと思っていました」という。

 体育が得意ではない篠崎さんは、進路相談で先生に「体育コースは難しいが、冬の校内ロードレース大会でがんばってみろ」とアドバイスされて一念発起。大会に向けた持久走の授業のたびにその友達の後に必死でくらいついて走り、本番では前年の成績をはるかに上回る全校17位。先生に努力を認めてもらえるだけの結果だった。

 高校を卒業した後、しばらくはバレエ漬けの毎日。厳しいレッスンを受けながら、先生の授業の手伝いに多くの時間を割いた。「一日中同じ場所にいて、同じ毎日を繰り返す自分を省みて、バレリーナになるにはこんなに地味な生活をしなければならないのだろうかと、考えたこともあります」と回顧する。

 その半面、アルバイトをしたり、友達とおしゃべりしたりするのは楽しかった。それでもやはりバレエへの情熱がしぼむことはなかった。

 「この道を手放してはいけない」という思いを支えに努力を重ね、ロシア、アメリカへの留学も経験。川口ゆり子、今村博明が率いるシャンブルウエストに加入して数多くの公演に参加し、2000年から長谷川礼子バレエスタジオで講師を務めている。

■アラブ役で称賛

 これまでに演じたさまざまな役柄の中で強く印象に残っているのは、『くるみ割り人形』のアラブという役。清里高原の野外公演で篠崎さんの演技を見たある招待講師が、終演後に「あなたがアラブを演じた人ね、すごくよかったわ」と声をかけてくれた思い出があるからだ。輝きを放つ脇役として認められたうれしい出来事だった。

 「子供の頃からやりたいと思っていた憧れの役で、公演の前に何度もビデオを見て研究しました。偉大な先生から自分の踊りを評価してもらい、努力すればいつか実を結ぶときがくると実感しました」と心情を語る。

■夢の実現を支援

 バレリーナとして活躍する傍ら2012年、自宅一階に篠崎れい奈バレエスタジオを開設した。「自分の枠を超える人を育てたい」という思いが強くなったことが大きな要因だ。

 「バレエを学ぶ上で一番大事なのは素直なこと。今すぐ結果が現れなくても、バレエを愛する心を持って練習を積み重ねれば、5年後、10年後に自分なりの達成感を得ることができると思います」。

 プロを目指す子供たちのためのクラスのほか、趣味で習いたいと考えている大人向けのクラスも設けている。スタジオの隣りは母照美さんが経営する学習教室。最近ある人から、「あなたが子供の頃、照美さんが私の学習教室とれい奈のバレエ教室を備えた家にしたいと話していたのよ」と聞いたという。「もしかしたら私は母と一緒の夢をかなえたのかも知れません」と口元をほころばせる。

 これからの活動については、「私が夢をかなえたように、子供だけでなく趣味や健康、美容のためにバレエを始めたいと考えている大人の方の夢や希望をかなえるお手伝いをしたい」と熱を込めて話し、「そのためには、まず自分自身が率先して頑張らなければいけませんね」と明るい笑い声を響かせる。

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